山崎阿弥(声のアーティスト、美術家)は、2016年のACCフェローシップを受けニューヨークに滞在、現地のアーティスト、キュレーターや一般市民へのインタビューを実施しました。山崎氏は作品を通して、人間とその環境、そして宇宙とのつながりを探求しています。彼女は声を通して、特定の空間独特の「共鳴」を捉え、ほとんど聞こえないものを具現化します。声は、彼女の創造と思考のためのツールであるだけでなく、究極の不変の存在でもあります。「声というのは、音として消えた後も、物理現象として振動という形で空気中に存在し続けるものです。
声の誕生・消滅・共鳴というこの軌跡を考える芸術表現は、世界の仕組みをより深く理解する可能性を開く、思考の実験であると私は考えています。 私の創造を引き起こす衝動は、幼少期から意識し始め、現在に至るまで続いている "世界や自分を構成するものは何か"、"自己と他者を隔てるものとは何か" という根源的な問いから来ています。」と山崎氏は言います。”ear to catch (耳で捕える)” において、山崎氏はその境界線を解き、その一瞬を掴みながら、世界の音に耳を澄ませています。
自宅での時間を使って、いつも作っている羽根のインスタレーションのミニチュアを作ることにしました。新型コロナウィルスが世界流行してから、世界のサウンドスケープは大きく変化しました。いつも全力で音に耳を傾けている私にとって、耳に負担がかかっているように感じます。このミニチュアの中では、小さな羽根の渦が耳に入ってくる音をごく短い時間だけ捉え、自分をそこに留まらせ向き合わせてくれます。
これを作ったのにはもう一つ理由がありました。3月31日に大切な人を亡くしました。その人がいなくなる直前に電話をかけたところ、小さな声にこの人の息づかいが混じって聞こえてきました。その人はもうこの世にはいませんが、あの時の音、音の振動はまだこの世にあるのかもしれません。このミニチュアはそれを捕えることができるのだろうか?と思いました。家に居る間、私はよく聴いたり歌ったりしています。この先また自由に人と音に出会える日を楽しみにしています。
「グランティからの寄稿」は、アーティスト、専門家、また文化のアンバサダーとしての国際的なコミュニティにおけるACCのアルムナイの声をシェアするためのプラットフォームです。これは、世界中の言葉、映像、映像、音を通した文化交流です。私たちの身体が旅をすることはできなくても、私たちの心は出会うことができます。