尾竹永子(振付家・ダンスアーティスト)氏は、2003年にACCフェローシップを受け、デュオ「Eiko & Koma」の一人としてカンボジアにおけるダンスを調査、プノンペンでワークショップやパフォーマンスを行いました。2019年には北京を拠点に活動する振付家でダンスアーティストのウェン・ホイ(文慧)(ACC 1996, 1998, 2019)との交流のため、ACC/BCAF コンテンポラリー・アーツ・フェローシップを受けました。今後のプロジェクトとしては、ニューヨークのダンスペース・プロジェクト (ACC 2005, 2009)でのトーク「Reimagining Conversations Without Walls (壁のない会話を新たに想像する)」、グリーンウッド墓地でのパフォーマンス「A Body in a Graveyard (墓地における身体)」などが予定されています。最近の執筆活動においては、彼女の友人であり仲間であり、また2009年ACCフェローでもある故サム・ミラー(1952-2018)氏に宛てた手紙が、MoMAマガジンで紹介されています。
「私は今年の1月、アジアン・カルチュラル・カウンシル (ACC)と北京現代美術財団 (Beijing Contemporary Art Foundation/BCAF)の支援により、1ヶ月間中国に滞在しました。滞在は、新型コロナウィルス感染拡大により数日を残して中断されてしまいましたが、ウェン・ホイとは十分な時間を過ごし、彼女の友人たちと話したり、私のビデオ講義やワークショップを開催できたことは、とてもやりがいのある有り難い経験でした。」
「何よりも重要なことは、政治的にも文化的にも日本や米国とは異なる国で生活し活動しているインディペンデント・アーティストが、立ち直り、慎重でありながらも決意を持って行動していることを知れたことです。自宅に閉じこもっている間も世界中の仲間との交流を続けるだけでなく、そのうち皆で集まり訪問し合えることができるようになることを心より願っています。違いは探究心の動力になります。私達は我慢を続けますが、お互いに手を差し伸べ交流したい気持ちは変わらずに強く持っています。」
コロナウイルスの影響と深刻さが明らかになる直前に、尾竹永子氏とウェン・ホイ氏は、北京のゲーテ・インスティテュートにて「デリシャス・ムーブメント・ワークショップ:親密さと近さ」を開催しました。この作品について、彼女は次のように書いています。
「来年、彼女は永子がここにいたことを思い出すことができます。私はいつも、距離とは順応性のあるものであり、ある場所に行くことは、振付とセルフ・キュレーションの一形態であると感じているし、そのように述べてきました。もちろん、振付というのは、その内容や計画において即興性を伴うものであり、また、セルフ・キュレーションとは一人ですることではありません。セルフ・キュレーションとは、実際には、自分が選択し、信頼することにした他者との共同キュレーションを意味することが多いです。そして、これが、私の中国での経験とウェン・ホイと過ごしたことを要約しています。」
尾竹氏は、6、7月には東京大学で初のオンラインクラスを教え、シアトル・フェスティバル・オブ・ダンス・インプロヴィゼーションの一環として、彼女の特徴的な「デリシャス・ムーブメント・ワークショップ」のシリーズをZoomで終了したばかりです。振付家として、コネクターとして、またダンスの分野での共同製作者として、多忙な日々を送っています。
「私の最近のプロジェクトであるウェスリアン大学主催の「バーチャル・クリエイティブ・レジデンシー」を、ACCのコミュニティの皆様に是非シェアしたいと思います。これは、ニューヨークから日本へ帰国後、2週間の自己隔離期間中に取り組み始めたものです。そこで作ったコンテンツ、ビデオ、文章、対話などをテキストの一部として授業に使用しています。」
バーチャル・スタジオとは何でしょうか?尾竹氏は次のように記述しています。「私が劇場でパフォーマンスをする時は、観客はその場にいたいと思ってくれていることが前提で、比較的皆様元気で意欲的です。しかし、観客が家に閉じこもっている時に、自分が率先して動画を送って直接リーチしても、同じようにはいかない...。ということで、見たい時に見たい人のために自分の作品を共有できるバーチャル空間を作ることにしました。そうすると、今すぐにでも後からでも来てもらえるようになります。ウェブはライブの美しい緊張感に代わるものではありませんが、当分の間はこのフォーマットでシェアできるものを届けていきたいと思います。私が作っているコンテンツは、この先単なるバーチャルのままで有り続けるのではなく、今後のインスタレーションやパフォーマンスの構成要素になっていくことを意図しています。」
彼女は、私達がこのスペースに参加できるようあたたかく迎え入れてくれます。
「時間のある時、その気になった時に、是非あなたの目、心、声を、惜しみなく提供してください...。あなたが今どこにいるか、どのようにしているか、あなたが何を考えているかを info@eikoandkoma.org までメールで是非お聞かせください。」
「グランティからの寄稿」は、アーティスト、専門家、また文化のアンバサダーとしての国際的なコミュニティにおけるACCのアルムナイの声をシェアするためのプラットフォームです。これは、世界中の言葉、映像、映像、音を通した文化交流です。私たちの身体が旅をすることはできなくても、私たちの心は出会うことができます。